甲状腺について   甲状腺の病気  甲状腺のホルモンが増加する病気  バセドウ病

   バセドウ病

どんな病気?
 バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に作られる病気、すなわち甲状腺機能亢進症を 起こす代表的な病気で、過半数は20〜30代の女性が占めています。当院では、病気の説明、抗甲状腺剤やその副作用、治療法の選択や成績などを簡略に記したリーフレットを作成しています。

症状
 甲状腺腫、頻脈、眼球突出(バセドウ眼症)はメルゼブルグの3兆候としてつとに有名ですが、 3つとも揃っている方は13%位しかいません。他には、多汗、振戦、体重減少、易疲労感などの 多彩な症状がみられます。 突然手足、ことに足が動かせなくなり、抱えられてくること(周期性四肢麻痺)もありますが、 これは男性だけにみられます。 ごく稀ではありますが、心不全に至って息切れや動悸(心房細動)を来すこともあります。

原因
 甲状腺を刺激する抗体(TSH受容体抗体)が原因ではないかと考えられていますが、厳密にはまだ不明です。

診断
 典型的なケースでは症状だけで診断がつきますが、病気の程度を把握したり、他の病気と はっきり区別(正確には鑑別診断と云います)するために下記の検査が必要になります。
  • 甲状腺ホルモン(FT3, FT4 )と甲状腺刺激ホルモン(TSH)
    FT4 とTSHは欠かせない検査ですが、T3が優位に高くなることも屡々みられますので、 FT3の測定も要ります。
  • 甲状腺自己抗体
    TSHレセプター抗体はバセドウ病の診断で極めて重要な検査です。 抗サイログロブリン抗体(TgAb)、抗TPO抗体(TPOAb)も検査します。
  • 超音波検査
    触診(手で触れること)で甲状腺腫のおおよその大きさは分かりますが、 より精度が求められる場合は、この検査で計測し算出します。
    報告によって若干の差違はありますが、バセドウ病の3〜9%に甲状腺癌の併発がみられますので、 バセドウ病だけと安心しないで超音波検査を受けましょう。尚、‘しこり’のある場合は、超音波検査と超音波ガイド下吸引細胞診検査をおこなわないと 癌であるか否かは分かりません。
    本院では、バセドウ病と無痛性甲状腺炎との鑑別にもカラー・ドップラー法を用いています。
    バセドウ病の治癒過程では、カラー・ドップラー断面の血流分布、つまり初診時にみられた 火焔状の血流が病状の改善につれて殆ど消失していくなどの変化が目に見える形で分かります。
    FT3, FT4 やTSHの数値データは、どうしても頭で考えないと理解できないのですが、 カラー・ドップラー画像は視覚データなので、直感的に改善の度合いを理解していただけます。 では、1例を見てみましょう。
(1).2005年 1/21   (2).4/1   (3).5/13
写真:バセドウ病1   写真:バセドウ病2   写真:バセドウ病3
  • FT3  3.30pg/ml(2.36-4.51)
  • FT4  0.81ng/dl(0.72-1.59)
  • TSH  4.06μg/ml(0.36-5.36)
  • TSAb  144%(180%以下)
  • TBII(AB)
 
  • FT3  3.01pg/ml
  • FT4  0.8ng/dl
  • TSH  4.06μg/ml
  • TSAb  200%
 
  • FT3  3.05pg/ml
  • FT4  1.00ng/dl
  • TSH  2.25μg/ml
 
(4).10/3   (5).12/6
(プロパジールを中止)
  (6).2006年 1/31
写真:バセドウ病4   写真:バセドウ病5   写真:バセドウ病6
  • FT3  3.03pg/ml
  • FT4  1.18ng/dl
  • TSH  1.37μg/ml
  • TSAb  147%
 
  • FT3  3.12pg/ml
  • FT4  1.33ng/dl
  • TSH  0.867μg/ml
 
  • FT3  3.43pg/ml
  • FT4  1.14ng/dl
  • TSH  0.886μg/ml
  • TBII(AB)0.1%

 甲状腺ホルモン値は12ヶ月の間ほとんど変化がなく、TSAb が4月に若干高値を示したが、 あまり有意といえるほどではありませんでした。では、プロパジールは何時中止したほうが ベストなのでしょうか。
 当院では、約10年前よりTSAbが400 %以下であれば、甲状腺断面の血流分布がほほ正常に 復し、下甲状腺動脈の血流量が正常化した頃をみはらかって抗甲状腺剤を中止しています。 この症例では、この条件を満たした12月にプロパジールの中止を決めました。 休薬後の血流もほぼ正常で、再燃について危惧することはないものと判断されます。
このようにカラー・ドップラー法は、バセドウ病の病勢の把握や抗甲状腺剤の中止時期を 決めるにも役立ちます。

  • 放射性ヨード摂取率検査(アイソトープ)
     上記(1)〜(3)の検査でバセドウ病の診断はつきますが、どうしても無痛性甲状腺炎との区別が 困難であれば、放射性ヨード摂取率検査をします。これはごく微量の放射性ヨードを内服し、 24時間後に甲状腺に何%集まるかを検査します。当然のこととして、 妊婦や妊娠を希望している方は対象外です。

  • 治療
     バセドウ病の治療の基本は、血液中に甲状腺ホルモンが増えたことによる甲状腺機能亢進症状を 抗甲状腺剤にて正常化させることです。
    抗甲状腺剤にβ-遮断剤などを併用すれば、交感神経の亢進による動悸、多汗等の症状は5〜7日位から 良くなり始め、もろもろの甲状腺機能亢進症状も1ヶ月前後にはかなり軽減します。
    治療自体は至って簡単なのですが、現実にはなかなか改善しない例が少なく有りません。
    自分自身の健康を取り戻すことが大事ですので、以下のことに注意しながら気長に内服治療を続けましょう。
    • バセドウ病について充分な説明を受け、納得して抗甲状腺剤を服用しましょう。
    • 甲状腺ホルモン・レベルが正常化し症状が改善すれば治ったと同じで、全く制限のない生活が おくれますが、抗甲状腺剤の内服は欠かせません。 ここまでくると、もう完治したと思ってなのか、薬の内服を中止したり、不規則な内服になりがちな方が 多くなります。ここで油断すると、すぐに元の機能亢進状態に逆戻りすることが多いので気を付けましょう。
    • 抗甲状腺剤を服用中、かゆみ、喉の痛みや高熱などの副作用がでることがあります。

      最近は、検診で発見されるバセドウ病の比率が増えましたので、4〜6ケ月で緩解 (治ったと考えても良い状態のこと)に至る症例がかなり増えましたが、基本的に、 バセドウ病の薬物治療は2年位かかると考えて下さい。
      一応、抗甲状腺剤による緩解の目安は2年とされていますが、抗甲状腺剤による重篤な合併症も みられず、1,2錠位で甲状腺機能の安定している方に、単に年月だけで治療法の変更を勧める ことはありません。
      2年間内服しても抗甲状腺剤の中止の見通しのたたない場合には、放射性ヨードを 使ったアイソトープ治療甲状腺亜全摘術かのいずれかを選択するよう 段階的にお話をしています。
      患者さんの一部には、低用量無機ヨード治療が 有効なこともあります。

      アイソトープ療法や甲状腺亜全摘術の向き不向きについては、バセドウ病患者さん向けの リーフレットを参考にして下さい。ただ、この5年間は甲状腺腫が100g以上ある患者さんに手術を 勧めてきましたので、リーフレットに書かれている甲状腺亜全摘術の手術成績は約5年以上前の 古いデータに基づいています。近いうちに、データを処理して改訂します。

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