甲状腺について  甲状腺の病気  甲状腺ホルモンが低下する病気  慢性甲状腺炎(橋本病)

  慢性甲状腺炎(橋本病)

どんな病気?
 慢性甲状腺炎は、1912年に九州大学の橋本策先生が世界で初めて報告した病気で、橋本病とも呼ばれています。
 慢性甲状腺炎は若い世代から中高年の女性に多いのが特徴で、成人女性の8〜12%にみられると言われています。
 ヨード欠乏のみられない本邦では、慢性甲状腺炎が甲状腺機能低下症をきたす最大の要因となっています。  ただ、すべての患者さんが甲状腺機能低下症になるわけではありませんし、機能低下から正常に復することも稀ではありません。
 生涯、甲状腺機能に異常のみられない方が多いのですが、無痛性甲状腺炎になったり、バセドウ病へ転化したり、腫瘍ができたりすることもありますので、定期検診は受けるべきでしょう。
 あまり記載されていませんが、重大な合併症として、気道の狭窄が稀ながらみられます。
 これは、自然に回復することはありません。

原因
 自己免疫の異常によってある種のリンパ球が甲状腺組織を破壊し、慢性炎症が生じます。

症状
 甲状腺が大きく硬くなりますが、機能が正常の方では何の症状もありません。
 甲状腺ホルモンが不足してくると、徐々に体重が増え、肌が荒れやすく化粧ののりが悪くなりると共に、周りの人に比べて寒がりになってきます。
 更に、悪化すると顔や手足がむくんだり、動きが緩慢になったり、寒がりなど甲状腺機能低下症に特有の症状がみられます。この段階で発見されずに悪化すると、脈がゆっくりとなり、軽い運動でも息切れなどの心症状がみられるようになります。

検査
 血液中の甲状腺ホルモン・レベルや甲状腺自己抗体(TPOAbやTgAb)について調べます。
 超音波検査にて腫瘍がみられないかどうかを調べ、腫瘍があれば超音波ガイド下吸引細胞診をおこないます。
 心症状のある場合は、胸部写真や心電図検査をおこない、必要に応じて心臓超音波検査にて心嚢液貯留の有無や程度について調べるとともに,心機能の評価もおこないます。
 気道の狭窄は、必ずしも甲状腺腫が大きくなると気道が狭くなるというものではありませんので、1度は胸部写真で頸部気道の径を測って、定期的なチエックが必要かどうか判断します。

治療
  1. 甲状腺機能が正常であれば、治療の対象にはなりません。
  2. 甲状腺機能低下症があるが、心嚢液の貯留が無い場合は、外来で甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)服用の服用を始めることになります。
     服用後、約1ヶ月半くらいで甲状腺ホルモン・レベルは正常域に復しますが、症状が良くなったから治ったと勝手に判断して中断してはいけません。
     チラーヂンSには副作用はほとんどなく、他の薬剤と併用しても問題ありません。
     尚、甲状腺機能低下症は自然に治ることもあり、生涯に渡って内服が必要とは限りません。
  3. 甲状腺機能低下症があり、心嚢液の貯留も認められる場合は、入院治療を薦めています。
     チラーヂンSにチロナミン(甲状腺ホルモン剤で、T3製剤)を併用し、減塩食などの治療をおこなえば速やかに改善します。
  4. 甲状腺ホルモン・レベルが高くなった場合は、無痛性甲状腺やバセドウ病への転化が考えられます。
  5. 超音波検査にて腫瘍の合併が分かった時は、超音波検査や吸引細胞診検査をおこないます。
  6. 当院では、胸部写真で頸部気道が8mm以下の場合、定期的(6〜12ヶ月)に計測をおこない、5mmと狭くなった時点で更なる気道狭窄を回避するために甲状腺全摘術とおこなってきました。

日常生活で注意すること
 海藻類を多くとりすぎないようにします。
 普通に食べるのは良いのですが、ダイエットの目的で海藻を天こ盛りで食べたり、根昆布を連日食べたり、昆布茶を一日に何杯も飲むのは勧められません。
 ヨードを取りすぎると、甲状腺機能低下症になることがあります。しかし、中止すると正常に回復します。

妊娠と出産後
 慢性甲状腺炎が不妊の原因になることはありませんし、甲状腺ホルモン剤が胎児や母乳に影響することもないので、妊娠、出産や授乳に関して心配することはありません。
 ただ、妊娠と判明した時や出産前に甲状腺機能が正常であることを確認しておくことは、安心して出産を迎える上で、ご本人やご家族にとっても大切なことだと考えます。
 慢性甲状腺炎は、産後に病状が変化することが少なくありません。
 産後2,3ヶ月頃から甲状腺機能の変化が現らわれはじめ、無痛性甲状腺炎と考えられる機能亢進、バセドウ病への転化や甲状腺機能低下症の更なる悪化など、下図のような変化がみられます。

 いずれになっても適切な診断と治療をおこなえば、多くは産後12ヶ月頃には機能が正常になります。
 ただ、早期の診断が必要なので、分娩後2.3ヶ月目には検診を受けるようにしましょう。  

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